プロ棋士、将棋ソフト使用の真相は今なお闇の中

 


将棋棋士三浦弘行九段が対局中に将棋ソフトを使用した疑惑が浮上し、日本将棋連盟が年内の出場停止処分にした問題は泥沼化の様相を見せている。

 


連盟の突然の処分決定に、三浦九段は潔白を主張。

 

 

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決定的な証拠は無く、連盟は弁護士ら専門家を中心にした調査委員会を今週中にも設置し、真相の究明を急ぐ。

 

 

疑惑発覚までの経緯と問題の背景をまとめ

 

◇渡辺竜王「指し手が酷似」 / 三浦九段「一致は当然」

 

関係者の話を総合すると、7月以降、関西の棋士らから「対局中に離席を頻繁に、かつ長時間繰り返す棋士がいる」として、対局中のスマートフォンなどの利用についてルール化を求める声が上がり始めた。

 


疑惑の棋士は匿名だったが、三浦九段が念頭にあったという。

 


9月26日に開かれた東西合同の月例報告会でも棋士の多くが厳しい規定を求めたため、連盟は今月5日に(1)スマホなどの電子機器は対局前にロッカーに預ける(2)対局中の外出禁止−−の2点を規則に追加すると発表した。

 

 

その2日前の3日、渡辺明竜王名人戦A級順位戦で対戦。三浦九段は竜王戦の挑戦者に決まっていたため、前哨戦として注目されたが、三浦九段が勝利した。

 

 

後日、渡辺竜王は関係者から指摘され、ソフトを使って調べたところ、三浦九段とソフトの指し手が高い確率で一致することを確認。

 


さらに感想戦で三浦九段が語っていた一部の変化手が、ソフトと一致しており、対局中に離席が多かったことも考え合わせて三浦九段がソフトを使っているとの疑念を深めたという。

 


15日開幕の竜王戦が迫っていたため、渡辺竜王の要請で、10日に渡辺竜王、谷川会長、佐藤天彦名人、羽生善治王位、佐藤康光九段らが島朗(あきら)常務理事の自宅に集まり、対応が協議された。渡辺竜王は「不正を行った三浦九段と対局するつもりはない。常務会で判断してほしい」と要求した。

 

 

連盟は11日の常務会で三浦九段から事情を聴いた。連盟によると、三浦九段から「これではとても(将棋を)指せないので休場する」と休場届を出す意向が示されたという。

 


提出期限の翌12日午後3時までに休場届が届かなかったため、竜王戦の開幕を前に「やむを得ず出場停止の措置をとった」という。

 

 

三浦九段は処分が発表された直後に「まったくのぬれぎぬ」とコメント。

 


指し手の一致率が高いことについては、盤面の状況が想定できる序盤中盤に「高いのは当然」で、終盤は「最善手を指せばコンピューターと一致することは不思議なことではない」と反論している

 

 

性善説で対応後手

 

疑惑の背景には将棋ソフトの急速な進化がある。2012年以降、電王戦で棋士とソフトが対局しているが、ソフトが大きく勝ち越している。

 


ただ、これまで棋士はそういうことはしないもの」とする性善説の考え方が強く、ルール化が後手に回ったといえる。

 

 

21日の棋士に対する説明会では、真相の徹底究明を求める声が上がる一方で、泥仕合になることを懸念する意見も出たという。

 

 

久保利明九段は「電子機器の持ち込み禁止は3年前から訴えていたが、(性善説で)反対が多く、受け入れてもらえなかった。早く規制していれば今回の問題は起きなかった」と話す。

 

 

羽生王位は20日未明に妻のツイッターを通じてコメント。「白か黒かを証明することは難しい。疑わしきは罰せずが大原則」とした。

 

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今後の焦点は、三浦九段が所有するパソコンやスマホの解析。

 


自身のパソコン4台は連盟に提出済みで、さらに自身だけでなく、家族のパソコンやスマホも含め、調査に協力する意向を示している。

 


解析方法などは両者で今後詰められるが、これらの解析がどこまで進められるか。ファンが納得する着地点が求められている。